2015年、お客様から特別なご依頼をいただきました。
娘さんが書かれた手書きの文字をそのまま使い、お客様ご支給の広葉樹ウォルナット材に刻んだ木製表札。
当工房にとっても印象深いこの表札は、2018年に一度メンテナンスを行い、今回が二度目のお預かりとなりました。

■ 完全な屋外に設置されていたウォルナット材の表札
ウォルナット材は高級家具などにも使われる人気の広葉樹材ですが、防腐塗料の染み込みがやや弱いため、屋根のある場所での設置を推奨しています。
しかしこちらの表札は、風雨や紫外線の影響を受ける完全な屋外にて、長年ご使用いただいていたとのこと。
あれから10年近く——
☑️ 屋根のない屋外設置
☑️ 紫外線や雨風にさらされる環境
にさらされた木製表札、前回のメンテナンスから約6年経過しました。
今回お預かりした際には、表面の防腐塗料が一部剥がれ落ち、下地の木肌が白っぽく退色している箇所も見受けられました。
ウォルナット材は塗料の染み込みが浅いため、こうした状態から内部に腐食が進行してしまうこともあるのですが、
川端様の表札は木地がしっかりと保たれており、腐れなども見られない状態でした。
お客様の元で大切にされながら、環境に耐え抜いたことがよくわかる、私たちの予想を超えた姿でした。

■ 「気に入っている表札だからこそ」二度目のメンテナンス
お客様からはメンテナンスのご相談時に、
「大変気に入っている表札なので…」
と、ありがたいお言葉をいただきました。
そして、表札をお戻ししたその日。
「無事待ちに待った看板が届きました!
このタイミングのこの今日に、娘の大学合格通知が届きました!なんと縁起の良い表札!
良いご縁も運んでくれる表札としても、またこれからも頑張ってもらいます。
素敵に仕上げていただきありがとうございました。」
という、あたたかなメッセージもいただきました。
10年前に表札に書いてくださったその「娘さん」の大学合格。
年月を経て、ご家族の成長とともに歩んできた表札の物語に、私たちの心もじんわりと温まりました。

■ 経年変化と向き合う「木の表札」
木製表札は、風雨にさらされることで、どうしても経年による変化が起こります。
それでも、こうしてメンテナンスを重ねながら大切に使い続けていただけることが、私たちにとって何よりの喜びです。
そして今回のように「ご家族の節目と表札が重なる瞬間」に立ち会えることは、作り手としての冥利に尽きます。
川端様、このたびはご依頼・ご報告ともに本当にありがとうございました。
表札が、これからも良きご縁を運ぶ存在となりますように。

⚠️ 広葉樹材(ウォルナットなど)をご検討の方へ
ウォルナットをはじめとする広葉樹材は、重厚感と美しさを備えた魅力的な素材ですが、防腐防カビ塗料の浸透性が低いため、雨風・紫外線の影響を受けやすい環境では劣化が早まる可能性があります。
当工房では、広葉樹材の表札は下記のような設置環境をおすすめしています:
☑ 屋根が1m以上ある場所
☑ 直接雨が当たらない場所
☑ 紫外線の影響をあまり受けない設置面
☑ 風通しがよく湿気がこもりにくい環境
長く美しい状態でお使いいただくためにも、設置環境に合わせた素材選びをご検討いただけますと幸いです。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
